絶対値記号を含む不等式

数学

事前知識

例1

以下の不等式を解く。
$$
|x| \geq 3 \label{1}\tag{1}
$$
原点からの距離が3以上となる範囲は、$-3$ 以下もしくは $3$ 以上である。

よって、$(\ref{1})$ を満たす $x$ の範囲は
$$
x \leq -3 \text{ または } x \geq 3
$$
となる。

少し面倒だがこの記事では大事な考え方のため、場合分けを使って解いてみる。

$|x|$ を記号を使わずに表すと、
$$
x \geq 0 \text{のとき、}|x| = x
$$

$$
x < 0\text{のとき、}|x| = -x
$$

となる。

$x \geq 0$ のとき、$|x| \geq 3$ は $x \geq 3$ となる。
$x < 0$ のとき、$|x| \geq 3$ は $-x \geq 3$ となるため、$x \leq -3$ である。

よって、$|x| \geq 3$ を解くと、$x \leq -3$ または $x \geq 3$​​ となる。

例2

$$
|x – 3| < 2 \label{2}\tag{2}
$$

この不等式について考える。

$x – 3 \geq 0$ のとき、$|x – 3| = x – 3$ となる。すなわち、$x \geq 3$ のとき、$|x – 3| = x – 3$ となる。
$x – 3 < 0$ のとき、$|x – 3| = -(x – 3)$ となる。すなわち、$x < 3$ のとき、$|x – 3| = -x + 3$ となる。

このことを踏まえて、不等式 $(\ref{2})$ を解いていく。

$x\geq 3$ のとき、$(\ref{2})$ は
$$
\begin{align}
|x-3| &< 2 \\
x-3 &< 2 \\
x &< 5
\end{align}
$$
今、$x\geq 3$ の場合を考えているので、このとき $(\ref{2})$ を満たす $x$ の範囲は
$$
3 \leq x < 5
$$
となる。

$x < 3$ のとき、$(\ref{2})$​ は
$$
\begin{align}
– |x – 3| &< 2 \
x + 3 &< 2 \\
-x &< -1 \\
x &> 1
\end{align}
$$
$x < 3$ の場合を考えているので $(\ref{2})$ を満たす $x$ の範囲は
$$
1 < x < 3
$$
となる。

よって、不等式 $(\ref{2})$ を満たす $x$ の範囲は $1 < x < 5$ となる。

これは点3からの距離が2未満の範囲が解であることを示している。

例3

$$
|x| + |2x – 4| > 5 \label{3}\tag{3}
$$

この不等式について考える。

場合分けすべき境目は絶対値記号の中が0のときである。つまり、$x = 0$ と $2x – 4 = 0$ すなわち $x = 2$ である。

絶対値記号を外した $(\ref{3})$ の左辺の式は$x \geq 2$ の場合と $0 \leq x < 2$ の場合と $x < 0$ の場合とでそれぞれ異なる。

( i ) $x \geq 2$ の場合。

$|x| = x$, $|2x – 4| = 2x – 4$ より
$$
\begin{align}
|x| + |2x – 4| &> 5 \\
x + (2x – 4) &> 5 \\
3x &> 9 \\
x &> 3
\end{align}
$$
今、$x \geq 2$ の場合を考えていた。$x > 3$ は $x \geq 2$ に含んでいるため、このとき、$(\ref{3})$ を満たす範囲は
$$
x > 3
$$
となる。

( ii ) $0\leq x < 2$ の場合。

$|x| = x$, $|2x – 4| = – (2x – 4) = -2x + 4$ より
$$
\begin{align}
|x| + |2x – 4| &> 5 \\
x – 2x + 4 &> 5 \\
x &< -1
\end{align}
$$
$0\leq x < 2$ の場合について考えているが、$x < -1$ との共通部分がないため $(\ref{3})$ を満たす $x$​ の範囲は存在しない。

( iii ) $x < 0$ の場合。

$|x| = -x$, $|2x – 4| = – (2x – 4) = -2x + 4$ より
$$
\begin{align}
|x| + |2x – 4| &> 5 \\
-x – 2x + 4 &> 5 \\
-3x &> 1 \\
x &< -\frac{1}{3}
\end{align}
$$
$x < -\frac{1}{3}$ は $x < 0$​ を含んでいるため、このときの $(\ref{3})$ の範囲は
$$
x < -\frac{1}{3}
$$
となる。

( i ) – (iii) より、不等式 $(\ref{3})$ を満たす $x$ の範囲は
$$
x < -\frac{1}{3}\text{ または } x > 3
$$
となる。

タイトルとURLをコピーしました