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部分体と拡大体の定義
$E$ を体とする。$E$ の部分集合 $F$ が $E$ で与えられた和と積で体となるとき、$F$ は $E$ の部分体という。
$F$ が体 $E$ の部分体であるとき、$E$ は $F$ の拡大体という。
$E$ が $F$ の拡大体であるとき、$E/F$ と書く。
中間体
$E/F$ を体の拡大とする。集合 $K$ が $F \subset K \subset E$ となる $E$ の部分体であるとき、$K$ を $E$ と $F$ の中間体という。
部分体の共通部分
$E$ を体とし、$F_1$ と $F_2$ を $E$ の部分体とする。このとき、$F_1$ と $F_2$ の共通部分 $F_1 \cap F_2$ も $E$ の部分体である。
理由
$a, b\in F_1 \cap F_2$ とする。$F_1$ と $F_2$ は $E$ の部分体なので、
$$
a + b \in F_1 \text{ かつ } a + b \in F_2
$$
であり、
$$
a\cdot b \in F_1\text{ かつ }a \cdot b \in F_2
$$
である。よって、
$$
a + b\in F_1 \cap F_2,\ a\cdot b\in F_1 \cap F_2
$$
となる。
また、同じような感じで $a\in F_1\cap F_2$ に対して、$a + c = 0$ となる、$c\in F_1\cap F_2$ が存在すること、そして $a \cdot d = 1$ となる $d\in F_1 \cap F_2$ がすることが示せる。
よって和に関しての逆元、積に関しての逆元が $F_1\cap F_2$ 内に存在する。
生成される体
体の拡大 $E/F$ に対し、$\alpha_1, \cdots , \alpha_n\in E$ とする。
$F$ と $\alpha_1, \cdots ,\ \alpha_n$ を含む $E$ の最小の部分体を
$$
F(\alpha_1, \cdots,\alpha_n)
$$
と書く。
すなわち、$F$ と $\alpha_1, \cdots ,\ \alpha_n$ を含む任意の $E$ の部分体 $K$ に対して、
$$
F(\alpha_1, \cdots,\alpha_n) \subset K
$$
が成り立ことである。$F(\alpha_1, \cdots,\alpha_n)$ を $F$ 上 $\alpha_1, \cdots \alpha_n$ で生成される体、または $F$ に $\alpha_1, \cdots ,\ \alpha_n$ を添加した体と呼ぶ。
$E/F$ を体の拡大とし、$\{K_\lambda\}_{\lambda\in \Lambda}$ を $F$ と $\alpha_1, \cdots , \alpha_n\in E$ を含む $E$ の部分体全体の族とする。このとき、
$$
F(\alpha_1, \cdots,\alpha_n) = \bigcap_{\lambda\in\Lambda} K_{\lambda}
$$
となる。
証明
$\bigcap_{\lambda\in \Lambda} K_{\lambda}$ は $E$ の部分体である。
(これは、上記で書いた部分体の共通部分と同じ感じで示せる。
例えば、和に関して閉じていることは以下のように言える。
$a, b \in \bigcap_{\lambda\in \Lambda} K_{\lambda}$ とする。すなわち、任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して $a,b\in K_{\lambda}$ とする。このとき、$K_{\lambda}$ は $E$ の部分体なので、任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して $a + b\in K_{\lambda}$ となるので、$a + b \in \bigcap_{\lambda\in \Lambda} K_{\lambda}$ である。)
よって、$\bigcap_{\lambda\in \Lambda} K_{\lambda}\in \{K_\lambda\}_{\lambda\in \Lambda}$ である。
また、$F(\alpha_1,\cdots,\alpha_n)\in \{K_\lambda\}_{\lambda\in \Lambda}$ である。
任意の $F$ と $\alpha_1, \cdots , \alpha_n\in E$ を含む $E$ の部分体 $L$ (すなわち、$L\in \{K_\lambda\}_{\lambda\in \Lambda}$) に対して、
$$
\bigcap_{\lambda\in \Lambda} K_{\lambda} \subset L
$$
となるので、
$$
\bigcap_{\lambda\in \Lambda} K_{\lambda} \subset F(\alpha_1,\cdots,\alpha_n)
$$
となる。また、$F(\alpha_1,\cdots,\alpha_n)$ は $F$ と $\alpha_1, \cdots ,\ \alpha_n$ を含む $E$ の最小の部分体なので、
$$
F(\alpha_1, \cdots,\alpha_n) = \bigcap_{\lambda\in\Lambda} K_{\lambda}
$$
となる。
例
例1
実数体 $\mathbb{R}$ は 複素数体 $\mathbb{C}$ の部分体である。
$\mathbb{C}$ は $\mathbb{R}$ の拡大体である。
また、実数体 $\mathbb{R}$ は複素数体 $\mathbb{C}$ と有理数体 $\mathbb{Q}$ の中間体である。
例2
$$
\mathbb{Q}(\sqrt{2}) = \{a + b\sqrt{2} \mid a, b\in\mathbb{Q}\} \tag{1}\label{1}
$$
であり、$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$ は $\mathbb{Q}$ の拡大体である。
$(\ref{1})$ に関して
$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$ を $\mathbb{R}$ の部分体として考える。
$F = \{a + b\sqrt{2} \mid a, b\in\mathbb{Q}\}$ とする。$\sqrt{2} \in F$ であり、$F$ は体 (体の定義と例の例2を参照) である。$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$ は $\mathbb{Q}$ と $\sqrt{2}$ を含む最小の部分体なので、$\mathbb{Q}(\sqrt{2}) \subset F$ となる。
$\{K_\lambda\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $\mathbb{Q}$ と $\sqrt{2}$ を含む $\mathbb{R}$ の部分体全体の族とする。任意に $a,b \in \mathbb{Q}$ をとる。このとき、任意の $\lambda\in\Lambda$ に対して、$a + b\sqrt{2}\in K_\lambda$ なので、$a + b\sqrt{2} \in \bigcap_{\lambda\in\Lambda}K_{\lambda}$ となる。よって、
$$
a + b\sqrt{2} \in \bigcap_{\lambda\in\Lambda}K_{\lambda} = \mathbb{Q}(\sqrt{2})
$$
なので、$F\subset\mathbb{Q}(\sqrt{2})$ となり、$(\ref{1})$ を満たす。