前提知識
数列の極限〜収束編〜
定義
数列 がどの値にも収束しないとき、数列 は発散するという。
例
は発散する。
仮に、数列 が何かしらの値 に収束したとする。すなわち、
このとき、収束の定義を思い出してみると、どんな を取ってきても十分大きな自然数 に対して、
が成り立つはずである。
イメージ
しかし、例えば を取ってきたとする。
としたとき、 を満たす任意の自然数 に対して、
になる。ただし、 は を超えない最大の整数とする。(例えば、 の場合 2.3 を超えない最大の整数は 2 なので、)
よって、どんな を取ってきても、ある に対しては、十分大きい に対して、 となってしまうため、 は発散する。
発散の種類
に発散
上でやった例
は が十分大きくしていくと、 も十分大きくなっていく。このとき、 は に発散するといい、
と表す。
正確には、十分大きな正の実数 を取ってきても、十分大きな自然数 に対して、 が成り立つ、すなわち
任意の実数 に対して、ある自然数 が存在して、 を満たす任意の自然数 に対して、
を満たすとき、数列 は に発散するという。
の場合、
とおく事により、 が に発散することが示せる。
に発散
十分大きい自然数 に対して、 が負の方向に十分小さくなるとき 数列 は に発散するといい、
と書く。
簡単な例で言うと、 のとき は に発散する。すなわち、
である。
正確な定義は、十分小さな実数 を取ってきても、十分大きな自然数 に対して、 が成り立つ、すなわち
任意の負の実数 に対して、自然数 が存在し、 を満たすすべての自然数 に対して、
を満たすとき、 は に発散するという。
振動する
が収束せず、 にも にも発散しない場合、 は振動すると言う。
例えば、
の場合、数列 は発散するが、 にも にも発散しないので、この数列は振動する。
が発散することの理由
のように、 は か 1 しか値を取らない。そのため、少なくとも は や 1 に収束することはない。
例えば以下の図のような位置 に収束するとする。
とすると、すべての自然数 に対して、
が成り立つ。
次に、 は 1 にも収束しないこと確かめる。
とする。 が奇数のとき、 となるため、どんな自然数 を取ってきたとしても、 が を満たす奇数のとき、 となってしまう。
よって、 は 1 には収束しない。
が に収束しないことも同様の方法で示すことができる。
よって、 は発散する。
が や に発散しない理由
のとき、すべての自然数 に対して、 となるため、 は に発散しない。
のとき、すべての自然数 に対して、 となるため、 は に発散しない。