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空間ベクトル2
目標
この記事の目標は以下の定理を示すことである。
と と が1次独立である 任意の空間ベクトル に対して、
を満たす が唯一つ存在することは同値である。
例
空間ベクトル2で考えた例を扱う。
例1
とする。
と と は1次独立である。
, とすると、
である。
についての連立方程式を解くと、
となり、これ以外の解は持たない。
よって、任意のベクトル をとると、
と表すことができる。
例2
とする。
と と は同一平面上にあり、1次独立ではない。
例えば、 とする。
このとき、 の形で表せれるとすると、
となる。
(② × 3) – ① をすると、 となり、(② × 2) – ③ をすると、 となる。
しかし、これを満たす は存在しないため、 は という形で表すことができない。
定理の証明の前に
定理の証明のポイントとなるところは、
と と が1次独立である 任意のベクトル に対して、
と表せる、というところである。
図で考えてみると、 と と は1次独立であることから、 と と は同一平面上にないため、 で表せそうである事はイメージできる。
成分表示を利用して考えてみると、
とする。
と と が1次独立とすると、任意の に対して、連立方程式
を満たす が存在するかを考える必要がある。
しかし、今回は連立方程式を利用して証明する方法ではなく、別の方法で証明することにする。
証明の方針としては、まず任意のベクトル に対して、
で表せる1次独立なベクトル と と を見つける。
(実際、例1でやったようにそのようなベクトルは存在する。)
そこから、 を にしても、 の形で表せることを示す。
さらに、 → , → としても、 の形で表せることを示す。
記号
このページで使う記号を定義する。
が のスカラー倍、すなわちある実数 に対して と表せるとき と書き、そうでないとき と書く。
これは、 とすると、 が と同一直線上にある場合、 と書ける。
が のスカラー倍と のスカラー倍の和、すなわちある実数 に対して、 と表せるとき、 と書き、そうでないとき と書く。
これは、 と が1次独立、すなわち零ベクトルでない と が同一直線上にないとすると、 が と と同一平面上にある場合、 と書ける。
が のスカラー倍と のスカラー倍と のスカラー倍の和、すなわちある実数 に対して、 と表せるとき、 と書き、そうでないとき と書く。
いくつかの補題
目標の定理を証明する前にいくつかの補題を証明する。
補題1
と と が1次独立であるとする。
また、空間上のベクトル は かつ とする。
このとき、 と と は1次独立であり、任意の に対して、 である。
証明
より と と は1次独立である。
(空間ベクトル2を参照)
任意に をとる。
は
と表せる。
また、 より、 と表せる。
より、 である。
よって、
となる。
よって、これを に代入すると、
となるので、 となる。
補題2
と と は1次独立、 とする。
このとき、 かつ かつ となる事はない。
すなわち、 または または である。
証明
かつ かつ とする。
かつ ならば
かつ
と書ける。よって、 より
であり、 と と は1次独立なので、 かつ である。
よって、 と表すことが出来て、 は と同一直線上である。
また、 なら
と表せるので、 より
となり、 と と は1次独立なので、 となり、 となってしまい矛盾する。
よって、 かつ かつ となることはない。
補題3
と と は1次独立とする。
また、 と も1次独立、すなわち零ベクトルでない と が同一直線上にないとする。
このとき、 または である。
証明
かつ であると仮定する。
このとき、 かつ と表せる。
よって、 となる。
と と は1次独立なので、 かつ である。
よって、 となり と が1次独立であることに矛盾するため、 かつ となる事はない。
よって、このとき、 または である。
定理の証明
まず、 と と が1次独立である 任意のベクトル に対して、
と表せること、すなわち を示す。
と と が1次独立であるとする。
とすると、 と と は1次独立であり、任意のベクトル に対して
と表すことが出来るので、 となる。
同様に であることも言える。
補題2より、 または または である。
例えば、 とすると、補題1より と と は1次独立であり、 となる。
仮定より と は1次独立なので、補題3より または である。
よって、補題1より となる。
と と は1次独立より、 である。
よって、補題1より となる。
次に一意性を示す。
を と で表せたとする。
より、 となる。
と と は1次独立より、 かつ かつ である。
よって、 となるので、一意性は示された。
最後に、任意の空間ベクトル に対して、
を満たす が唯一つ存在する と と が1次独立であることを示す。
仮定より、 となる が唯一つ存在する。
よって、 は、 を満たしそれ以外の値は持たないので、 と と は1次独立である。
補足
(3次元)空間上の任意のベクトル は、1次独立である2つのベクトル と により生成させることはできない。
(すなわち、あるベクトル はどんな実数 を取っても
と表すことができない。)
また、どんな4つのベクトルをとってきても、3次元空間では1次独立になることはない。
つまり3次元空間では1次独立であり、任意のベクトルを生成させるために必要なベクトルは3つである。